プラスチック業界へのIoT導入事業のご紹介

開発の背景:成形条件管理の必要性

グローバル経済においては、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)、ビッグデータ、人工知能(AI)の活用により、ビジネスや社会の在り方そのものを根底から揺るがすドイツの「インダストリー4.0」と呼ばれる大変革が進みつつあり、我が国では、アベノミクスの第2ステージとして、これらの社会産業構造変革への対応を「新時代への挑戦」と位置づけて積極的に推進しています。
また、IoT等の導入はものづくり現場に大きな変革をもたらすことが期待されていることから、このような変化をチャンスと捉えて、スピード感ある大胆な挑戦に踏み切るかどうかが、これからの勝敗を分ける重要な鍵となります。
しかしながら、我が国製造業におけるIT・データの利活用は、諸外国に比べて決して進んでいるとは言えず、これはプラスチック業界においても同様であり、製造プロセスにおけるIT・データの利活用が進んでいない状況でもあります。
そこで、プラスチック業界のIoT導入を進めるために「プラスチック業界におけるデータフォーマットの共通化及びシステムオープン化実証事業」を、平成28年度に実施いたしました。

成形条件管理の必要性

プラスチック射出成形業者においては、以下のような様々な場面で成形条件情報の管理が求められています。
営業:顧客から成形記録の提出を要求された
品質・変化点:成形条件の無断変更がないか、監視したい
トレーサビリティ:成形条件変更の時期・期間を把握したい
品質・予備保全:実績値でのばらつき発生の有無を監視したい
金型試作の効率化:試作時の成形条件の詳細記録を残したい
品質・コスト:成形条件と成形不良の因果関係を解明したい

プラスチック射出成形業者は、その多くが複数メーカーの射出成形機を使用していますが、成形条件管理や、その記録の保持、活用等のニーズを満たすために成形条件を記録する場合、従来は、①人手により紙に記録、②成形機メーカーが販売するオプションソフトウェアを利用、③成形機に搭載されたメモリに保存された成形条件情報を利用 の3通りのみが選択可能でした。
①の場合、作業時間を要する上に、転記作業による誤記入の可能性があり、その後データを活用するためにはデジタル化が必須となることから、成形条件情報を再利用することは非常に困難です。
②の場合、デジタル化された成形条件情報をそのまま利用可能な方法であるが、複数メーカーの成形機で構成された工場内の成形条件情報を収集するには複数メーカー分のオプションソフトウェアを導入する必要があり、それらを利用する限り一元管理は困難です。
③の場合、メモリ容量に制限があることからデータ取得のために作業が必要となり、①と比較すると作業の負担は軽減されるものの、その後、収集データを成形条件項目別に整理して、解析に至るまでには相当の手間が必要です。
結果的に、成形条件情報の利用には『手間』と『コスト』を要することが、成形条件情報の積極的な利用に至らない最大の理由である一方、ものづくりの高付加価値化や差別化を目指すために成形条件情報を扱いやすい形式で入手することは、長年の課題でした。

システム開発と実証事業

経済産業省 委託事業  平成28年度「IoT推進のための社会システム推進事業」

前述の課題を解決するために、近畿経済産業局、ムラテック情報システム㈱、(一社)西日本プラスチック製品工業協会の3者が、平成28年度「IoT推進のための社会システム推進事業」を活用し、射出成形機メーカー5社(住友重機械工業㈱、東洋機械金属㈱、日精樹脂工業㈱、㈱日本製鋼所、ファナック㈱(順不同))、及びオブザーバーとして(一社)日本産業機械工業会、周辺機器メーカー、生産管理システムメーカーが横断的に参加し、グローバル基準の規格EUROMAP63に準拠した成形機のデータフォーマットの共通化、そのデータを統合するシステムである「ミドルウェア」の開発及びシステムの無償提供による、IoT導入拡大を図る事業に取り組み、「ミドルウェア」が平成29年3月末に完成しました。